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2010/03/09

GPS(だけ)では道迷いは防げない

GPSはただの道具で、その有効活用には知識、この場合は読図能力、が必要。という当たり前の話なんだけど、そのうち「GPS持ってたから道迷いしないと思った」とかいう阿呆な遭難者が出そうな悪寒。

なんでこんなことを書いているとかいうと、先週末起こったかぐら~津南の遭難事故に絡んで、Twitter雪山クラスタでそれなりの影響力を持つと思われるsnowaraiさんが「GPSを持ってれば道迷いは防げる」という発言をRTしてしまっていたのに対し、これはまずいのでは、とコメントしたのだった。流石にこれもRTしてくれて(登り返しの体力気力の指摘GPSだけでなく読図能力の指摘)よかったのだけど、その後色々考えたので書き留めた次第。

どんな道具も使いこなす知識が必要となる。道迷い遭難のリスク管理については次のような1~4の段階とそれに応じた道具・知識が必要であり、登山、特に道無き道を行くことが多い(それゆえ楽しい)雪山登山ではそれらを備えておくことが必要となる。

1. 道迷いを未然に防ぐ
・道具:(紙の)地図+コンパス/GPS(+コンパス)
・知識:読図、ルートファインディング

2. 起きてしまった道迷いを自力で解消する
・道具/知識:1.と同じだが、より高度な読図能力が求められる
加えて、必然的に発生する登り返しに耐える体力と精神力、それから的確な判断を下す冷静さが必須。「GPSを持ってれば道迷いは防げる」という元の発言した方が、(多分主に滑り降りる場合を想定して)「道迷い前提でリスク管理すべきと思う」、とその後書かれているのはここに掛かると思う。滑降時について言えば具体的には、リスクを最小限に抑えるなら、登ったトラックを辿って滑る。そうでないなら、登り返しのための体力と時間の余裕を残しておく、登り返しの判断の閾値もリスク含みモードにする。等々。

3. 自力で解消出来ないので他者による救助(第三者レスキュー)を待つ
・道具:ショベル、ツェルト等
・知識:安全なビバーク場所の選定、雪洞掘り、いざ救助される場合、例えばヘリコプターによる救助の際のお作法(参照:ヘリコプターの呼び方 - 豊後ピートのブログ

予定していた行動時間を越える、いわゆる遭難の範疇。

ここは他者が絡むので、生還のためには知識・道具だけでなく組織やプロセスという観点も重要となる(KOPTという整理のフレームワークが便利なので使っている。Knowledge / Organization / Process / Technology=Tool。なお2までの段階でもパーティーであれば組織体制、意思決定プロセスを明確にしておく必要はある)。山岳会に入っていないのであれば警察組織にお世話になることが多いだろう。プロセスとしては、山岳会であれば一定期間下山報告が無い場合の通報とかを指す。とりあえず組織・プロセスのところは今回は措いておく。山岳会入るべきか、とか、登山届がどうとか、色々トピックはあるのだろうけど。

4.あぼーん
ひたすらさ迷い体力を消耗して、あるいは他力救助が及ばずに、疲労凍死や餓死、または、滑落等により即死あるいは受傷により行動が制限され疲労凍死や餓死、など。

今回の事故は3でどうにかなったところ。今売りの『』でちょうど4に行くパターン、冷静に3に踏み止まれない事象を扱っている。三歩が活躍して3.5とかの段階で解決するんだろうけど。

で、本題の1-2のところだけど、GPSは点で現在地を教えてくれるだけで、道具の機能としては地図+コンパスによる現在地同定と全く変わらない。紙の地図+コンパスに対するGPSの利点としては、ホワイトアウトのような遠望が利かない状態でも現在地同定が容易という点が挙げられる。それゆえ雪山での活用が図られているところではある。他方、GPSの不利点として、画面が小さいため全体像の把握がしづらいというのがある。馴染みの山域でない限り紙の地図と併用した方がいいだろうと思う。

行動のためには、点としての現在地の把握に加えて、これからどういうルートを取るべきかという線あるいは面の判断が必要になる。これには読図の知識、それをベースにしたルートファインディングの能力が必須。GPSは、地図+コンパス同様、それを自動でやってはくれず、自分で的確に情報処理を行う必要がある。もちろんGPSのナビゲーション機能を使えば若干の補助は出来るが、それに頼れるのは、1の状態のとき、かつルートを細かく設定しており、かつ正しいルート上に居るかを細かくチェックする場合、という限定的な状況に限られると思う。が、正直、あまりナビゲーション機能は使っていないのでよく分からない。いずれにせよ2の状態におけるルートファインディングは紙の地図と変わらない、というか上の段落で書いた一覧性の問題があるのでGPSは紙の地図に劣る。

この辺りを考えると、雪山バックカントリーを個人で楽しむには、やはりガイドツアー参加がベストなのだろう。事故の起点となることが多い道迷いのリスクが減らせる(ついでに、雪崩リスクも。まあ1月の尻別岳におけるノマドの事故のようなケースもあるけど)。横道に逸れるが、その点でSPRAY誌の基本姿勢は賛同出来る。奇しくもこの土曜にかぐらでツアーやっていたみたい。確か2008年の創刊号に、この雑誌でバックカントリーについて書かれている内容はガイドツアー参加が前提です、みたいなことが明記されていた。

ガイドもこの辺りを意識して、地図(あるいはGPS)とコンパスを使って見せればいいんだろうけど、そこまでやる良心的なところがあるものなのかはガイドツアーに参加したことが無いから知らない。ガイドは当該山域を熟知しているだろうから一々地図出して確認とかしてなさそうだし、ガイド料金を取るネタというかスキル(の一部)を惜しげも無く晒すとも思えないが、どうだろう。Twitterやっているようでフォローしている磐梯山のガイドの方は「(コンパスを)お客様の前で3度使ってお見せした」とか書かれており、そういう啓蒙活動をちゃんとやるガイドも居るのだろうけど。

ツアーに参加せず自力でやるなら、上記のことが分かっている経験者に師事するあるいは山岳会に入って修行するか、それが嫌なら(ぼくはそのパターンなわけだが)、せめて本を読むなりして勉強するべき(これが結論)。また、本を読んで得た知識は所詮机上のものなので、それに加えて実践での経験を積んで生きた知識にして行くことが当然必要。そのような試行錯誤がどうしても発生する過程を安全な範囲で行うためにも、やはりガイドツアーあるいはガイドレベルの経験者同伴が望ましく、次善は自分たちの身の丈を知ったグループ、単独行というのは最悪の選択肢だろうとは思う。

閑話休題。読むべき本としては、最低限、読図ものとと遭難ケーススタディもの、といった辺りか。
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上記2トピックについて、次の2冊のようなバックカントリースキー・スノーボードの入門書にもサワリは書いてある。

今年出た下の『雪山の基本』が最近は定番ぽいけど、上の『雪山100のリスク』の方が現場感があるような気がしてぼくは好き。

少しでもバックカントリー入るなら、まずこの辺りを読むのは当然と思うが、そこから始めて、各分野の専門的な(といっても概説的な)本あるいはウェブサイトなりに進むのもいいのではないかな、と思う。各分野っていうのは、ここで述べて来た道迷い・読図の他に、積雪・雪崩、セルフレスキュー、気象、登攀技術、ロープワーク、など(これに滑降技術も加えたいところだけど、バックカントリーに特化したものって無いような)。

読図は、村越真て人が色々出しているので、そこから適当に気に入ったものを選ぶのがいいように思う。ぼくが読んだのはこれ。

平塚晶人て人のもクラシックみたいだけど、なんか古臭いイメージで敬遠していたのだが、調べたら3月に新しい本を出すみたい(2万5000分の1 地図の読み方 実践上達講座 (BE-PAL BOOKS))でちょっと気になるところ。

遭難のケーススタディについては、必ずしも冬山の事例ばかりでないけど、こちらとか。

ちなみに途中で触れた豊後ピートさんのブログでは、ハンディGPSではないけど「「GPS付きの携帯電話があるから、地図もコンパスもいらないや」という、ニュータイプな遭難者」について2年前に言及していたりしていて流石。ぼくの懸念は上で書いた通り「ハンディGPSがあるから読図やルートファインディングの能力もいらないや」という妙な方向に行ってしまわないかというところ。他に「道迷い遭難を防ぐシリーズ」てのもあったりして、色々勉強になるブログ。

と、まあぼく自身、山は素人なわけだが、それでも最低限これくらいは勉強してそれなりに考えながらやってますよ、という話であった。とはいえ素人ゆえ何か間違っているかもしれないので、何かの拍子でこのエントリを読まれた方はその点十分留意頂きたい。

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