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2012/04/12

北海道山岳レスキュー研究会第35回例会に参加して新谷暁生さんの話を聞いて来た

周辺の山の最新情報が載っていないかと三段山クラブからCafe三段山に行ってみたら、この会合のお知らせが載っていたので昨日4/11に行ってみた。新谷さんの生のお話が聴けるチャンスということで。
(追記。そのCafe三段山にその後講演内容抜粋も載ったようだけど、絶対URLが取れないので、それを採録したH本さんのブログを参照→新谷さんのおせっかい: UMANORI!!

■感想
ニセコの取り組みに関する概要は本などを読んで大体知っていた感じ。あと新谷さんの話っぷりも『Persona』という映像作品で観て知っていた。

けどやはり生で聴くとよい。行ってよかった。文章もそうなのだけど、話題が微妙に飛ぶようで関連していて、妙なグルーブ感があった。

当然最新動向の話もあって、それももちろん興味深かった。最近の雪崩研究の流れとか、ニセコ雪崩調査所あるいはそこが発行するニセコなだれ情報の今後とか。

■開催概要
「北海道山岳レスキュー研究会」のサイトは見付けられず。この案内は転送自由みたいで、Cafe三段山掲示板の記事の絶対URLの取り方が分からない、というか多分無いので、転載しておく。

北海道山岳レスキュー研究会第35回例会のご案内 【日時】 2012年4月11日(水) 19:00~20:45 【会場】 かでる2・7 720研修室(7階)      (札幌市中央区北2条西7丁目 北海道立道民活動センター)

「雪崩の安全への考え方」 新谷暁生(ニセコ雪崩調査所代表)
ニセコなだれ情報 http://niseko.nadare.info/
【新谷暁生プロフィール】http://www.shiretokoclub.jp/banyakitahama-k2.html
【ニセコなだれ調査所】
2000年に「ニセコアンヌプリ地区なだれ事故防止対策協議会」の設立に伴い、ニセコ雪崩情報を作成する機関として設立された組織
【参加費】  会場使用料として1人500円~800円程度を集めます。(金額は参加者数によって決定します)
【申し込み先】 田原功一 rescue-tiger@ex.me-h.ne.jp
【問い合わせ先】阿部幹雄 mabe@seagreen.ocn.ne.jp

■開始前
参加費は結局500円だった。申し込み無しでの参加でも大丈夫だった。懇親会も勧誘されたが、車なのでパス。どこか安いビジホでも取っておけばよかったかな。
新谷さんがビルの場所分からないということで遅れる、とのアナウンス。
結局19時ちょうどに会場に現れた。そのまま開始。
席はほぼ満席。

■講演スタイル
スライドなどは無し。原稿なども無し、フリースタイルで訥々と話された。

■講演内容
iPhoneでぽちぽち取っていたメモから。文責は当然ぼく。そんなこと言っておらずただのぼくの妄想かもしれないのでそういうことで。

・かぐらから戻ってそのまま来た。秀岳荘に車を停めてそこから来て迷った

・かぐらは東京から近く、沢山人が来ている。事故はまだ起こってないけど、去年からかぐらのパトロールと事故防止について話したりしている

・ニセコの事故防止の話。きっかけは花園が出来て、人がたくさん入って事故が起きるようになったこと

・どのスキー場もコース外は滑走禁止とする。けど入る人は出て来る

・ニセコでは80年代から10年で80名が事故に

・事故が起こると捜索依頼が来る。 大体死んでる。生存救出は1件だけ

・事故防止が重要

・ロープでコース外禁止がよくある対策。外に出たら自己責任、と。けどロープくぐる人は居る。特にニセコはどこでも滑れるし

・放置すればトラックを追ってどんどん人は外に出る

・三浦雄一郎の活動に端を発するパウダーブームの影響

・単に禁止でなく、一定のルールで外に出る、という方が事故は減るだろう、という考えから、自治体含め協議会を設置、ニセコローカルルールを策定。必要に迫られて始めた

・条件に応じてゲートの開け閉めをする。毎日朝8時までにパトロールと協議。昨日開けてないから今日は何時に開けたい、とか

・ゲートでは客に状況を具体的に説明 する

・吹雪の最中とその直後に事故が起き易い、という考え

・風によるスラブが雪崩の原因。これがニセコでリスク判定する一番重要な要素

・他の考え方、これに対する批判もあるというのは承知している

・この5年はニセコでの予測の精度が上がっている。どの向きのどの斜面が危ないかまで予測出来るように

・吹雪なら危ないかというと違う。標高800mのライン、1000m、1150m。それと風向き。この風ならこのエリアはこういう状況、とか予測。150メートルの標高差で風の強さはかなり違う

・いろんなツールを使う。気象庁のデータなど。800hpaの高層は予測に有効

・風向きによりチェックするデータを変える。海上保安庁のデータで、例えば北東の風だとカムイ、西風だと弁慶岬のデータ。30分後にニセコに同じような風が吹く、など

・ニセコでもアンヌプリ山頂に自前の風速計があるが、場所に問題がある。三角点の平地に立っていて風速が風向きにより拾えない

・37mの風がこの前の嵐のとき吹いた。けどアンヌプリ山頂の自前のは精密な機械ではない。プロペラが凍ってしまい、0mが記録されることも。37mが記録される前にもずっと0だった。氷が飛んだのかいきなり37を記録

・危ない日に山に行かない、危ない斜面を避ける、というのが原則。客に危ないところがどこかを教える。知恵を付けてやる

・ロープの外に行こうとする人に対しては(高圧的に禁止するのでなく)お願いする。あなたはいいかもしれない、技術もあるし。けどそのトレースに付いて行く他の人はそうではない、と

・ロープくぐりを放置すれば人がどんどん出て行く。事故の可能性が高まる。ハインリヒの法則。ロシアのヘリコプターの80年代の墜落事故の例。メンテ不足から次々に落ちた。放置すれば事故はやがて起こる

・どこの山も、かぐらも北海道の他の山も、ロープくぐってみんな外に行く

・山の事故とスキー場コース外の事故も違うという考えもあるかも。けど自分は区別していない。ニセコがゲートを閉じると他の山に行く人も少数居る、そしてそこで事故が起こる。ニトヌプリ、尻別、羊蹄山

・リスクを各自判断すべきだが、それが十分でないので他の山で事故が起こるのだろう

・ニセコでも上を開かなくてもトラバースして事故を起こしたり。死亡事故は無いが骨折事故はある。ゲート開いてすぐ行って鉱山の沢で雪崩たり。40cm降った後、30cmのところで破断。幸い下の人も落とした人も逃げられた

・ニセコの事故防止の特色は、自己責任と安易に言わない、というところ。山に行くからには自己責任なのは確か。けどリフト回す側が責任転嫁する言い訳にしない。その前に果たすべき役割がある。すなわち、リスクの説明

・自己責任を責任転嫁に使ってはならない。自己責任は限定的。例えば小学生には説けない。これこれこうだから危ない、と教えてあげないとならない

・北海道の雪崩事故の共通性。冬型の後に起こっている。1965年の日高、札内川の事故、稜線は30mの新しい雪庇だったとか。1966年十勝、美瑛岳の沢の事故は吹雪の日。そして近年のニセコの事故も同じ、吹雪の最中かその直後

・つまり、古くから同じ傾向。 過去の事故から学ぶべき。危ない日に危ないところに行かない賢さを持つべき

・(啓蒙活動を)繰り返せばいずれ事故は無くなるか。そんなことはない。最近もカミホロでベテランが亡くなった事故もあった

・山で死ぬのはよくない、自動車事故などで死ぬのもよくない、およそ死ぬのはよくないが。減らせる方法があるならやるべき

・自由の尊重と安全との釣り合いを持たせること

・現場のパトロールと滑る皆さんの間の信頼関係が生まれること、それが事故防止に重要。現場で伝えることで、パトロールもよくやっている、と客からの見方も変わったのだろう。以前はパトロールなんて何も分かってない、と見られていた。そのような信頼関係がニセコで事故が起きにくくなったことにつながったのでないか。分からないけど

・昔に比べて最近は装備も充実している。10年前雪崩ビーコン持ってるひとなんて居なかった。今は100人ゲートの外に行く人が居たら20人かもっと持っている。外人は8割方持っている。ゲートでチェックすると応えてくれる。ニセコはそういうところだと思ってくれている。ありがとう、と伝える

・ただし、ビーコンの義務化には反対。持っている人と持っていない人の区別をすべきではない

・ニセコでもチェックはするが、義務ではない、とはっきり伝えている。でも何かあったとき役立つかも、とも言う。そうすれば持ってない人でも2-3年後に持つようになるかも

・こう言うとビーコン反対論者と思われるが、北海道でガイドにビーコン持つように最初に言ったのは自分。ノマドの宮下などに。当初ガイドにビーコンを5台貸したが、返って来ない

・雪崩の規模をサイズXとかのレベルで見るのは残念な傾向。小さくても死ぬわけで、死人が出た、ということに目を向けるべき。去年バックボウルに60cm埋没した事故があったが、そのときは10cmの層が割れ(るサイズの小さな雪崩だっ)た

・雪崩で犠牲者が出れば家族の時間はそこで止まる。規模は二の次三の次

・事故は起こる。人間は間違うもの。それを減らす努力は必要

・雪崩は自然現象。人間がそこに居なければ事故は起こらない

・今日はこういう条件だからここには行かない、という判断が出来れば事故は減るはず

・雪崩の研究をしているのでなく、調査所と名乗っており、ニセコだけでなく、白馬など他のエリアの事故も関心持って調査している。他の事例を見てもやはり雪崩の原因は吹雪、あるいは雪が降らなくても風の影響

・西村教授(西村浩一?)と最近話した。彼が、世界標準の雪崩知識、とか言われているがそんなものは無い、カナダの標準でしかない、と言っていて、(流石の)自分もそこまで言って大丈夫なの、と思った

・弱層だけではダメではないか、という考え方が広まっている。フランスで風によるスラブの発達の研究が始まった

・とはいえニセコでもピットチェック(による弱層判断)は毎日3箇所でやっている。これは雪崩情報に反映させるというより、合ってるかどうかのチェックが目的。弱層だけでは判断出来ない

・風によるスラブはガラスのように弱い。けどなんでそうなのか、まだ学術的な研究が進んでないのが現状

・ただ経験的にそれは分かっている。弱せん(弱線? 弱繊?)、と自分たちは呼んでいる。これは学問的には解明されていないらしい、ということが西村教授との話で分かった

・事故が起こる日(風によるスラブが発達する日)は決まっているわけで、事故は減らせる

・救助する側も大変。レスキューデスの問題。救助する最中に死ぬというのは結構例がある

・ニセコは小さい山、事故の場所は予測出来る。救助には時間が勝負。15時にゲート出るやつも居る。それでも翌朝になってからでなく夜のうちに探しに行かないと。高性能のヘッドランプを使っている。会社間の連携を一番にしている

・それと警察との連携。倶知安警察署はありがたい存在。道庁の動きはずれている感じ。

・最近は事故が起きてないから危機感が無くなって行っている。予算も回らない

・一方でお客さんは呼ぶ。安全対策には注意を払わない。ニセコ町の観光予算7000万。安全には25万。道庁は7億。安全に250万、そのうちニセコエリアには12万(この数字は正確にメモれてないかも。でもそんなオーダーの話だった)

・自分もずっとやっているが今年65歳。もう止めようかと思っている

・ニセコローカルルールの今年の地図は2.5万の地図を鉛筆でトレースしたもの。そのまま使うとやばいから。酔った勢いでやった。外人には評判良い

・10万枚刷って半分配った。けど他は役所の廊下に放置か。前作ったのもそんな感じ

・滑る人の身になること、偉そうにしないこと

・自己責任言うな。自己責任論は正論だから反対出来ない。けどそこから先に議論が進まなくなってしまう

・消防でいう予防消防。事故を起こさせないことが重要

■Q&A
20:20くらいで話が終わり、質問を受け付けた。

●逆に吹雪からどれくらい経てば安全?
・沿岸部と中央高地で違う。ニセコでは18mの吹雪の後10m以下になり5時間経てば亀裂は入るけど落ちない、と経験的に分かっている。けど中央高地はもっと掛かるだろう。翌々日も危なく、地形を使った行動が必要だろう

●ニセコは宿泊客が多いと思うが、宿などで事前の情報提供はしている?
・全くやっていない。それによりトラブルは連続している。山麓の問題、と呼んでいる。山で行われていることは麓の人たちには関心無い。宿泊場所での情報提供などは行うべきだが、そこまで行ってない

・今年、外人経営のホテルで2件、情報をロビーに貼らせてくれと依頼があった

・けど観光を進める立場の人たちが分かってない。カナダのやり方を基準に、ニセコは遅れてる、と批判していたり。ボードのライダーが招聘され、好きなところ滑れとリフト券渡され、コース外滑りまくって2日でリフト券没収され問題になって問題になった事例があった

・また役所は担当がころころ変わるのも問題。サトウ町長は何もしなかったと言われいていたが、(新谷さんの活動を)公的なものに推進してくれていた。次の町長は新田隆三さんとか他の考えの人にも話を聞いたけど、結局やった方がいいね、と新谷さんの活動を理解してくれた。今の町長は安全面が手薄で、自分とは合わないというのが正直なところ

●ゲートで立っている人たちは大変な仕事だが、どうやって人を集めたか? 自分の山域もやらなければ、なのだが。想いだけでは続けられない
・費用の問題は大きい。調査所には240万、5つのスキー場(と町?)から出ていて、人件費に充ててる。スキー場からは売り上げに応じて。12月から3月まで、3人を使うので、80万づつ

・それだけではやって行けない。長期的な手立てが必要。そこがニセコ町とぶつかるところ。自分は宿をやったりしているのでいいけど、若い人が結婚してもやって行けるようにしないと。役所も、キャンプ場の管理の仕事、とか案を出してくれているけど、自分たちはそれには乗り気でない

・ニセコなだれ調査所はスキー場とは独立した存在。調査所に全ての責任被せられる可能性もあるが、責任の問題を言っていたらやってられない。雪崩情報は間違うこともある、ただそれは破断面の深さなどで、雪崩が起きるはずがないときに起きた、ということはない

・雪崩情報を英訳しているのも優秀な人材で、縛っているのは勿体無い

・西村教授の話もあり、来シーズンからやり方を変えようかと思っている。気象予測から雪崩判断するな、というのがこの20年の流れだが、変わって来ている

・これまでのデータをまとめようと思っている。誰でも雪崩情報を出すことが出来るように。ただ朝の短い時間でまとめる必要がある。船頭多くして…になったらまずい。有珠山の噴火予測で、北大の人がやればすぐに済んだのを、ごちゃごちゃやって遅れた事例。スキー場持ち回りでやる、とか。調査所は解散してもよい、別にこだわってはいない。というのが今シーズン終わっての考え方

・(「自分の山域」というのは旭岳の話)旭岳は東川町が積極的にやろうとしているようだけど、それがいいとは思えない。どこがやれば説得力持つか、が重要で、自分は環境省がやるべきだと思う

・ガイドは利害が絡むのでダメ。ニセコでも10年くらい前にガイドがやろうとしたことがあったが、地元の人たちがやろうとしても問題が起こる、他のエリアでの事例見ても

・環境省が一番、それを地元で支える体制にするべき。環境省は夏も監視活動しているし、その流れがいいのではないか。町では出来ない

●冬山登山での事故防止?
・自分は登らなくなって長いので、何とも言えない。やはり登り続けることが大事ではないか。昔どこの山を登っただとかは無意味

・自分も山頂の風速計直すときアンヌプリ山頂まで登って、こりゃもうだめだ、と。がさい(北海道弁?)

・毎日山に居ること。基本に忠実に。登山届け出す、とか。警察に断られても

・あと、今の人たちは装備が良すぎる。昔の道具もよかった。皮の登山靴。ナイロンは画期的。毛糸のぼっこ手袋はシンサレートだのに勝る、ヒマラヤで使ったけど

・3/27の事故も、稜線から少し下がればよかったのではないか。でも化繊のアンダーにツェルトで-20度耐えられるか。ウールが良いのは分かってるはず。本人も間違えたと思ったことだろう(昔からの知り合いのようだった。事故のこととか詳細知らないのでこの辺り文脈よく分からず。後で調べたい)

・着実に経験積むことが大事。その中で間違えることもある。過信しないこと。しぶとく登り続ける。誰それはどこに行った、ではない。自分が頑張るだけ。賢さ大事

【締めの言葉】同じ北海道の岳人として、同じ山に行く人のことを考える責任がある。違う山だから、とかダメ。排他性と閉鎖性を取り除くこと。ニセコが成功しているとすれば、そこ。色んな人を受け入れてやって来た

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